遠い日の思い出。10

ロンドンで裁断及び洋服の歴史などの講義を受け、何日か過ぎたある日可也くたびれた
古いバイク屋に目が止まり、何となく中を覗き見た。人影は無く、古いバイクが其の中に何台
も置かれて居た。其の日のオイルとガソリンの匂いに忘れ掛けていた何か、にスイッチが入った
様だ。改めて夜に其の店に行って見ると、白髪の老人が夢中にエンジンを組んでいた。オイルで着ている物も手も真っ黒だ。店先の私を見つけると、ヤーと手を振った。裸電球の中の店のオーナーは英国紳士がバイクを、真っ黒になりながら直している様に見えた。此の古びたバイク屋でイギリスの伝統を見た様な気がした。短い時間では有ったが毎夜通い、何点かのパーツを購入した。日本には無いタイプのバイク店、新車を置かず、クラシックなバイクに囲まれた、とてもこじんまりとした自分の居場所が有る、時間がゆっくり流れている、店。現実にとても日本でその様な店では職業として成り立つとは思えない、が
何か漠然な物が頭の中で固まり始め、此の時接触不良だった何かにスイッチが入った。

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